クリニック案内

医院名
なかしま脳神経外科クリニック
院長
中島 利彦
住所
〒502-0929
岐阜市則武東2丁目15-18
診療時間
9:00 - 12:00、16:00 - 19:00 
休診日:木曜午後・土曜午後・日曜・祝日
電話番号
058-215-8668

認知症の話

認知症の話

認知症の話

➤ その1

➤ その2

➤ その3

その1

人は年をとるにつれて記憶力が低下してきます。

テレビに出てきた俳優の名前がなかなか思い出せず、自分の記憶力の低下を嘆いておられる方は少なくないと思います。

記憶力が低下してきて心配になるのは認知症です。

年配の方と病気の話をしていると、なりたくない病気の一つに必ず挙げられるのも認知症です。

記憶力の低下に気づくと、自分は認知症になるのではないかと心配されますが、年をとって記憶力が低下することと認知症とは全く異なります。

そもそも認知症という病気は、アルツハイマー病の他にもさまざまな病気があり、その中には病気の初期には記憶力の低下が目立たないものもあるのです。

ただ、認知症患者さんの中でアルツハイマー病が占める割合が非常に大きいため、認知症=アルツハイマー病 といった認識を持たれてしまうこともやむを得ないかもしれません。

そもそも、記憶は人の名前や約束した事柄、どこかに出かけて経験したことなどさまざまな情報を自分の脳に保存して、必要な時にそれを取り出すことができて、初めて記憶として役に立つわけですが、年をとると保存した情報を取り出すことがうまくできなくなってきます。

人の名前がのど元まで出てきているのに出てこないというもどかしい気持ちがまさに情報をとりだせない状態です。

一方で情報を脳に保存することができなくなってしまうのがアルツハイマー病です。

情報が保存できないため、新しいことを記憶することは困難ですが、古い記憶は残っていますから、昔のことはよく覚えているのに・・・と患者さんのご家族が嘆かれます。

記憶をする事柄によっても記憶のされやすさが異なります。

アルツハイマー病になると、自分の周りで日常に起こった出来事や自分が体験した事柄 ―エピソード記憶と呼ばれます― が特に記憶に残らなくなってきます。

昨日の夕食のメニューが思い出せなかったり、財布をどこに片づけたか忘れてしまったりするのは老化によるもの忘れですが、アルツハイマー病では食事をしたことや、財布を片付けたこと自体を忘れてしまうのです。

そのため、食事が終わってすぐにご飯はまだかと尋ねたり、財布を片付けたことを忘れてしまって、財布がなくなった、誰かが財布を盗んだに違いないなどと言って大騒ぎをしたりするのです。

記憶力の低下はアルツハイマー病の症状の中では中核となる症状で、その他にも時間の感覚がなくなってしまったり、方向感覚がなくなったりするなど色々な症状が出てきます。

家族の方から患者さんの様子を聞くだけでアルツハイマー病と診断できることも少なくありません。

最近では認知症の進行を遅らせることができる薬が開発されています。

残念ながら認知症を治してしまうことはできませんが、薬は早期から使と効果が高いと言われています。

心配な症状があれば早めに相談されることをお勧めします。


その2

アルツハイマー病は認知症の代表的な病気ですが、認知症にはこの他にも色々な病気があります。

前頭側頭型認知症やびまん性レビー小体病といった認知症は、アルツハイマー病とは異なり病気の初期には記憶力の低下がみられません。

前頭側頭型認知症は人間性の変化が主な症状です。

他人や物事に無頓着になり、自己中心的な行動をとるようになります。

自分のやりたいように意の向くままに行動するため、スーパーマーケットにある果物を手に取っていきなり食べだしたり、コンビニでほしいと思ったものを手に取って支払いもせずに出て行ってしまったりします。

自転車に乗りたいと思ったら他人の物でも平気に乗って行ってしまいます。

決まりきった行動パターンをとったり、何かに強いこだわりを持ったりすることも特徴です。

毎朝6時に起きて散歩すると決めていると、たとえ土砂降りの雨の日だったとしてもいつもと同じように散歩しなければ気が済まないのです。

びまん性レビー小体病という認知症は、幻覚が見えることが特徴です。

子供が何人も部屋に入ってきて遊んでいたとか、外人がいきなり部屋に入ってきたなど、非常に鮮明な幻覚が見えます。

また、レム睡眠行動障害といって、夢でみたことに合わせて行動してしまう症状がみられることもあります。

友人と喧嘩している夢をみて隣に寝ている奥さんをいきなり殴ったりするのです。

もちろん本人は奥さんを殴ったつもりはありません。

徐々に手足の動きにこわばりが出て滑らかに手足を動かすことができなくなってきます。

前かがみになって小刻みに歩くようになったり、よく転ぶようになったり、パーキンソン病と呼ばれる病気と同じような症状がみられることも特徴です。

もちろん、前頭側頭型認知症もびまん性レビー小体病も症状が進むにつれて記憶力が低下してきますが、発病初期には比較的記憶力がしっかりしているため、最近人が変わったようになったとか、変なことを言うようになったといったことには気づかれますが、認知症は記憶力が低下するものだと思い込んでいると、認知症であることに気付かれないこともあります。

年配の人の様子が以前とはすこし変わったようだという時は、認知症に詳しい医師に相談していただくと良いと思われます。


その3

認知症という言葉の「認知」とは、「認知機能」という人間の持つ機能を表す言葉が元になっています。

そもそも、「認知」という言葉は、社会学的には 認知する=意識する というように何かに気付くような意味がありますし、法律的には血縁上の親子関係を認めることという概念があります。

ところが、脳科学における「認知」とは、人間が外界にある対象を知覚した上でそれが何であるかを判断したり解釈したりする過程のことを表します。

すこし難しいのですが、認知機能とは、何かを記憶したり、計算したり、問題を解決するため考えたり、段取り良く仕事をこなしたりするなど、人の持つ知的な機能を総称した概念を表す言葉なのです。

認知症は、子供の頃から発達してきた認知機能が成人になってから少しずつ衰えて、仕事や日常生活が困難になってゆく病気の総称なのです。

もちろん認知機能そのものは、老化とともに衰えてゆくことが知られています。

しかしながら年齢相応のもの忘れは認知症ではありません。

人の名前は忘れやすくても、言葉の意味やそれに関する知識のような記憶はなかなか衰えませんし、自動車の運転のように体を動かすことで獲得された記憶も年齢の影響を受けにくいと言われています。

職人の親方が若い者には負けないのはこのおかげです。老化とともに課題を遂行する速度が遅くなっていきますので、瞬時の判断は若いころのようにはできなくなっていきますが、認知症でなければ、ゆっくり時間をかけることで確実に課題をこなすことができます。

老化によって、運動機能は低下します。

高齢者が100m走で若者に勝つことはできません。

ところが、脳については高齢者の知的機能が若い人よりも劣っているとは必ずしも言えないのです。

「円熟」「老練」といった言葉があるように、職人や芸術家、企業の指導者など、高齢になっても活躍する人はたくさんあります。

脳は運動機能とは異なり、学習して知識を増やし続け、経験を生かした総合的な「知恵」というものを高めてゆくことができるのです。

脳は体のように加齢とともに衰えてゆくだけの器官とは異なります。

有意義な人生を送ることができるような、「衰え知らずの脳」にするために日々精進を続けたいものです。